センスは知識からはじまる 水野学

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著者プロフィール

・水野 学

・クリエイティブディレクター、good design company 代表取締役

・多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業後、1998年にgood design company設立。

・主な仕事に、NTTドコモ「iD」、熊本県公式キャラクター「くまモン」、「中川政七商店」ブランディングなど。

 

 

内容と考察

・タイトルに惹かれて購入した本です。デザイナーはセンスが求めらえる印象があり、プロのデザイナーである水野さんがどのようにセンスを磨いてきたのか、そのノウハウを学びたいと思いました。

 ・センスのいい人は、感覚でやっているように一見みえますが、実はとても論理的に、理詰めで物事を捉えているように感じます。

・水野さんは、「センスとは、数値化できない事象を最適化することである」と述べています。続いて、「センスのよさ」とは、数値化できない事象のよし悪しを判断し、最適化する能力である、と定義しています。

・そのために必要なのが、「普通を知ること」。普通こそ、「センスのいい/悪い」を測ることができる唯一の道具である、とあります。

 

歴史が、「知識を学んだ上で、今の時代で自分が何をしたらいいのかという礎をつくる授業」であるなら、美術とは「知識を学んだ上で、自分が何かをつくったり、生み出したり、表現したりする礎をつくる授業」であるべき

 

・「知識を学んで生かす」べく、上手い下手を気にせずにチャレンジすることも大切なのだと思います。もしかしたら、美術の授業こそ、複雑化した世の中に新しい制度を作り出す上で、必要なスキルなのかもしれないと思い至ったところです。

 

・組織においても同様かもしれません。日本のメーカーに欠けていたのは「ユーザーに、『徹底的に』気持ちよさを提供しよう」というセンス、 であると著者は述べています。

・これを自分の職場で、対従業員という目線で落とし込んで考えたとき、「画一的なデスク」、「何の面白みのないインテリア」、「電話や話し声でうるさいオフィス」などなど、オフィスのユーザーに対する「徹底的な気持ちよさ」は提供できていないように感じます。

(最近では、お昼寝ルームがあったり、フリーアドレスであったりと、工夫を凝らしたオフィスも増えているようですが、多くの企業ではまだ画一的なオフィスだと思います)

 

・企業の美意識やセンスが、企業価値になる。これが今の時代の特徴です。
・クリエイティブディレクターを改めて提議すれば、企業価値をセンスによって高めていく仕事。
・失敗を恐れず、縦割り構造の会社組織に横串をさせる人こそクリエイティブディレクター

 

・クリエイティブディレクターの不在こそ、日本の閉塞感の1つの原因なのかもしれません。

 

 

センスを磨くには

・では、どうやったらセンスは磨かれるのでしょうか。著者曰く、「あらゆることに気がつく几帳面さ、人が見ていないところに気がつける観察力」「知識を集積することと客観的になること」が必要とのこと。

・「センスとは知識の集積である」という著者の言葉は、日々の実践の積み重ねで得た知識、過去に存在していたあらゆるものから得た知識、これらこそ、センスに繋がるものであるのだと思います。

 

 

・イノベーションとは、知識と知識の掛け合わせである
 
・いつもと違うことをやってみること、行ったことのない場所にいくこと、書店をうろうろすることなど、これはすべて「旅」であると著者は言います。「旅」こそ、新しい知識を得るために必要なことなのだと思います。
 
・センスは、一朝一夕に身につくものではないと思いますが、しかし、特別な人にだけ与えられたものでもないことを、本書を読んで感じました。「知識の集積こそセンス」であるという言葉を忘れず、知的好奇心を大切にしていきたいと思います。